奈良甲状腺クリニック 院長
中村 友彦
(日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医)
亜急性甲状腺炎とは
- 亜急性甲状腺炎は、甲状腺が痛みを伴って腫れる代表的な病気です。
- 甲状腺の細胞が壊れることにより、一時的に甲状腺ホルモンが多くなります。
- その後、甲状腺ホルモンが少なくなることもあります。
亜急性甲状腺炎の原因
- 亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染によって引き起こされると考えられています。
- 上気道感染の2~8週間後にみられることが多いです。
- 季節や地域により、特定のウイルス疾患の流行時に集団発生することがあります。
亜急性甲状腺炎の症状
- 甲状腺が痛みを伴って腫れ、押さえると痛みが強くなります。
- 痛みは顎やのど、耳に広がることもあります。
- 咳をしたり、頭を動かしたり、飲み込んだりすると痛みが悪化する場合があります。
- 時間とともに、痛みの強い部位が甲状腺の片側から反対側へ移動する場合があります。
- その他、倦怠感、筋肉痛、発熱を伴うこともあります。
- 甲状腺ホルモンが多くなることにより、動悸や息切れ、暑がり、汗をかきやすい、手の震え、体重が落ちる、食欲が増す、軟便・下痢、疲れやすい、イライラする、落ち着きがない、月経不順、などの症状が出る可能性があります。
- バセドウ病に比べて、これらの症状は軽く、数か月で改善することが多いです。
亜急性甲状腺炎の検査
- 血液検査で炎症反応(CRP)の有無、甲状腺ホルモンの量を確認します。
- 超音波検査で甲状腺の大きさ、甲状腺内部の見え方、甲状腺の血流、腫瘍がないかを確認します。
- 亜急性甲状腺炎では、血液検査で炎症反応・甲状腺ホルモンの上昇を認め、超音波検査で痛みの部位に一致した炎症所見(低エコー域)を認めます。
亜急性甲状腺炎の治療
- 症状が強い場合には、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)を投与します。
- ステロイド内服により痛みはすぐに改善しますが、すぐに中止するとぶり返しますので、1~2週間ごとに症状を見ながら減量・中止します。
- 症状が比較的軽い場合には、ロキソニン®などの非ステロイド性抗炎症薬を使用することもあります。
- 甲状腺ホルモンが多い時期に動悸の症状が強い場合には、β遮断薬という動悸を抑える薬を使います。
- 炎症が改善した後、甲状腺ホルモンが少なくなることがありますが、自然に回復することも多いため、軽度であれば治療を行わずに経過をみます。
- 甲状腺ホルモンが少ない状態が持続する場合には、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS®)内服による甲状腺ホルモン補充療法を行います。
関連項目
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