奈良甲状腺クリニック 院長
中村 友彦
(日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医)
甲状腺腫瘍とは
- 甲状腺には腫瘍(結節、しこり)ができる場合があり、「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(甲状腺がん)」があります。
- 甲状腺腫瘍は「結節性甲状腺腫」とも呼ばれますが、良性腫瘍の場合に「結節性甲状腺腫」と呼ばれることが多いです。
- 甲状腺悪性腫瘍(甲状腺がん)には、乳頭癌、濾胞癌、低分化癌、未分化癌、髄様癌、リンパ腫などがあり、それぞれ特徴が異なります。
- 日本の場合、甲状腺悪性腫瘍(甲状腺がん)の90%以上が乳頭癌です。
- 乳頭癌は進行が非常にゆっくりで命に関わることは稀ですが、中には再発を繰り返す場合もあります。
甲状腺腫瘍の原因
- 多くの甲状腺腫瘍ができる原因は不明です。
- 一部の甲状腺腫瘍は遺伝子の異常により発生します。
- 若い時に放射線被曝があると、甲状腺乳頭癌の発生リスクが増えることが知られています。
甲状腺腫瘍の症状
- 甲状腺腫瘍が小さい場合は、症状がほとんどなく気が付かないことが多いです。
- 甲状腺腫瘍が大きくなると、しこりとして触れたり、甲状腺の腫れが目で見て分かるようになったりします。
- 通常は痛みはありませんが、腫瘍の中で出血して一時的に腫れて痛みが出る場合もあります。
- 甲状腺腫瘍が反回神経(声帯を動かす神経)を圧迫したりすると嗄声(声のかすれ)が出てくる場合もあります。
- 通常は甲状腺ホルモンは正常ですが、一部の腫瘍からは甲状腺ホルモンが分泌されて、甲状腺ホルモンが多くなる「甲状腺機能亢進症」となる場合もあり、「プランマー病」と呼ばれます。
甲状腺腫瘍の検査
- 血液検査で甲状腺ホルモンと「サイログロブリン」を測定します。
- サイログロブリンは甲状腺のみから産生されるタンパク質で、様々な甲状腺の病気で上昇します。
- 甲状腺腫瘍においては、良性・悪性どちらでもサイログロブリンは上昇する場合があります。
- サイログロブリンの値が高いだけでは良性・悪性の判断はできませんが、サイログロブリンの値が異常に高く持続する場合は悪性の可能性を考える必要があります。
- 甲状腺悪性腫瘍(甲状腺がん)手術後(特に甲状腺全摘後)の場合は、サイログロブリンが腫瘍マーカーになります。
- 超音波検査で腫瘍の位置、大きさ、見え方を確認したり、周囲のリンパ節の腫れがないかを確認したりします。
- 腫瘍が大きい場合や、見え方から悪性が疑われる場合には穿刺吸引細胞診を行います。
- 穿刺吸引細胞診は、腫瘍に細い針を刺して細胞を採取し、良性か悪性かを調べます。
甲状腺腫瘍の治療
- 良性腫瘍であれば通常は治療の必要はありませんが、大きい場合や、見た目が気になる場合は手術を行います。
- 小さな良性腫瘍でも、大きくなって手術が必要になる場合や、経過中に診断が変わる場合もありますので経過観察が必要です。
- 液体成分の多い良性腫瘍で大きな場合には、細い針を刺して液体成分を吸引して腫瘍を小さくする「穿刺排液」を行ったり、エタノールを注入して腫瘍を小さくする「PEIT(ペイト)(経皮的エタノール注入療法)」を行ったりする場合があります。
- 悪性腫瘍(甲状腺がん)であれば通常手術を行いますが、小さな乳頭癌(微小癌)の場合には手術を行わずに経過観察することもあります(積極的経過観察と呼ばれます)。
- 悪性腫瘍(甲状腺がん)の手術後は経過観察を行いますが、悪性度が高い場合や遠隔転移がある場合は放射線治療(アイソトープ治療)を行います。
関連項目
参考文献
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会編:甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺病理学会編:甲状腺癌取扱い規約 第8版. 金原出版, 2019.
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